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『ダンス・ダンス・ダンス』村上春樹(講談社)より抜粋

ダンス・ダンス・ダンス
『ダンス・ダンス・ダンス』
〈上〉
〈下〉
村上春樹

自分について何か喋ることから全てが始まる。それが第一歩なのだ。正しいか正しくないかは、あとでまた判断すればいい。(上p14)

 

人が何かを人生に求めるとき(求めない人間がいるだろうか?)、人生はもっと多くのデータを彼に要求する。明確な図形を描くための、より多くの点が要求される。そうしないことには、何の回答も出てこない。(上p14-15)

 

世の中には誤解というものはない。考え方の違いがあるだけだ。(上P21)

 

我々は高度資本主義社会に生きているのだ。そこでは無駄遣いが最大の美徳なのだ。政治家はそれを内需の洗練化と呼ぶ。僕はそれを無意味な無駄遣いと呼ぶ。(上p36)

 

何をすればよいかは、はじめからわかっていた。結論はずっと前から固い雲のように僕の頭上にぽっかりと浮かんでいた。僕はただそれを実行に移す決心をつけることができなくて、一日また一日と後回しにしていただけなのだ。(上p36-40)

 

善悪という基準も細分化された。ソフィスティケートされたのだ。善の中にもファッショナブルな善と、非ファッショナブルな善があった。悪の中にもファッショナブルな悪と非ファッショナブルな悪があった。……………そういう世界では、哲学はどんどん経営理論に似ていった。哲学は時代のダイナミズミに近接するのだ。

 

ソフィスティケートされた哲学のもとで、いったい誰が警官に石を投げられるだろう?いったい誰が進んで催涙ガスを浴びるだろう?それが現在なのだ。隅から隅まで網が張られている。網の外にはまた別の網がある。何処にも行けない。(上p104)

 

「あんたがここに来たのは、あんたがここに来るべき時がきたからだよ。」(上p143)

 

「あんたが帰ろうと思わなければ、ここは全く存在しないのと同じことなんだよ」(上p144)

 

「それは今にわかることだよ。それは理解されるべきときが来たら理解されることなんだよ」(上p146)

 

「あんたが求めていれば、それはあるんだよ」(上p147)

 

「踊るんだ。踊り続けるんだ。何故踊るかなんて考えちゃいけない。意味なんてことは考えちゃいけない。意味なんてもともとないんだ。」(上p151)

 

「現実の可能性はいくつもある。」(上p152)

 

「おいらは影として、断片として、そこにいた」(上p153)

 

「みんなはそれを逃避と呼ぶ。でも別にそれはそれでいいんだ。僕の人生は僕のものだし、君の人生は君のものだ。何を求めるかさえはっきりしていれば、君は君の好きなように生きればいいんだ。人がなんと言おうと知ったことじゃない。」(上p194)

 

「よくわかんないけど、乗っていて何となく親密な感じがする」
「たぶんそれはこの車が僕に愛されているからだと思う」
「そうすると親密な感じになるの?」
「調和性」と僕は言った。
「よくわからない」とユキは言った。
「僕と車とでたすけあっているんだ。簡単に言えば。つまり、僕がここの空間に入る。僕はこの車を愛していると思う。するとここにそういう空気が生じる。そして車もそういう空気を感じる。僕も気持ち良くなる。車も気持ち良くなる」
「機械も気持ち良くなるの?」
「もちろんなる」と僕は言った。「どうしてかはわからない。でも機械も気持ち良くなったり、頭に来たりする。理論では解明できないけれど、経験的に言ってそうなんだ。間違いない」
「人間が愛しあうのと同じように?」
僕は首を振った。「人間とは違う。こういうのはね、その場にとどまっている感情なんだ。人間に対する愛情というのはそれとは違う。相手にあわせていつも細かく変化している。揺れ動いたり、戸惑ったり、膨らんだり、消えたり、否定されたり、傷ついたりする。多くの場合意識的に統御することはできない。スバルに対するのとは違う」(上p204)

 

電話というのは置き去りにされた時限爆弾みたいに思える。……可能性だけが時を刻む。……………それは不器用な肉体を与えられた純粋概念のように見える。電話。(上p212)

 

「ああいうソフトでやわでわざとらしくて子供向きで商業主義的でミッキーマウス的なところは嫌なんだね?」(下p33)

 

dissilient (下p76)

 

「いやでもみんな成長するんだよ。そして問題を抱えたまま年を取ってみんないやでも死んでいくんだ。昔からずっとそうだったし、これからもずっとそうなんだ。君だけが問題を抱えているわけじゃない」(下p85)

 

「暗示性が具体的な形をとるのをじっと待って、それから対処すればいいんだと思う。
……………
「待てばいいということだよ」と僕は説明した。「ゆっくりとしかるべき時が来るのをまてばいいんだ。何かを無理に変えようとせずに、物事が流れていく方向を見ればいいんだ。そして公平な目でものを見ようと努めればいいんだ。そうすればどうすればいいのかが自然に理解できる。でもみんな忙しすぎる。才能がありすぎて、やるべきことが多すぎる。公平さについて真剣に考えるには自分に対する興味が大きすぎる」(下p88)

 

「僕はとても不完全な人間なんだ。不完全だししょっちゅう失敗する。でも学ぶ。二度と同じ間違いはしないように決心する。それでも二度同じ間違いをすることはすくなからずある。どうしてだろう?簡単だ。何故なら僕が馬鹿で不完全だからだ。そういう時にはやはり少し自己嫌悪になる。そして三度は同じ間違いを犯すまいと決心する。少しずつ向上する。少しずつだけれど、それでも向上は向上だ。」(下p107)

 

「必要というものはそういう風にして人為的に作り出されるということだ。自然に生まれるものではない。でっちあげられるんだ。誰も必要としていないものが、必要なものとしての幻想を与えられるんだ。簡単だよ。情報をどんどん作っていきゃあいいんだ。住むんなら港区です。車ならBMWです、時計はロレックスです、ってね。………ある種の人間はそういうものを手に入れることで差異化が達成されると思ってるんだ。みんなとは違うと思うのさ。そうすることによって結局みんなと同じになってることに気がつかないんだ。想像力というものが不足しているんだ。そんなものただの人為的な情報だ。ただの幻想だ。僕はそういうのにとことんうんざりしている。」(下p159-160)

 

何かがやってくるのを待てばいいのだ。いつもそうだった。手詰まりになったときには、慌てて動く必要はない。じっと待っていれば、何かが起こる。何かがやってくる。じっと目をこらして、薄明の中で何かが動き始めるのを待っていればいいのだ。僕は経験からそれを学んだ。それはいつか必ず動くのだ。もしそれが必要なものであるなら、それは必ず動く。
よろしい、ゆっくり待とう。(下p172-173)

 

「原理的に人生というのは不公平なんだ」
……………
「後悔するくらいなら君ははじめからきちんと公平に彼に接しておくべきだったんだ。少なくとも公平になろうという努力くらいはするべきだったんだ。でも君はそうしなかった。だから君には後悔する資格はない。全然ない」
ユキは目を細めて僕の顔を見た。
「僕の言い方はきつすぎるかもしれない。でも僕は他の人間にはともかく、君にだけはそういう下らない考え方をしてほしくないんだ。ねえ、いいかい、ある種の物事というのは口に出してはいけないんだ。口に出したらそれはそこで終わってしまうんだ。身につかない。君はディック・ノースに対して後悔する。そして後悔していると言う。本当にしているんだろうと思う。でももし僕がディック・ノースだったら、僕は君にそんな風に簡単に後悔なんかしてほしくない。口に出して『酷いことをした』なんて他人に言ってほしくないと思う。それは礼儀の問題であり、節度の問題なんだ。君はそれをまなぶべきだ」
………………
「いったい私はどうすればいいのかしら?」と少しあとでユキは言った。
「何もしなくていい」と僕は言った。「言葉にならないものを大事にすればいいんだ。それが死者に対する礼儀だ。…」
「人というものはあっけなく死んでしまうものだ。人の生命というのは君が考えているよりずっと脆いものなんだ。だから人生は悔いの残らないように人と接するべきなんだ。公平に、できることなら誠実に。そういう努力をしないで、人が死んで簡単に泣いて後悔したりするような人間を僕は好まない。個人的に」(下p195-197)

 

「難しいことだよ、とても」「でもやってみる価値はある。」(下p198)

 

美しく魅力的な中年の女性を見ることは人生における大きな喜びのひとつだ。(下p235)

 

五反田君は自分の中の衝動を自分自身にうまく同化させることができなかった。そしてその根源的な力が彼をぎりぎりの場所にまで押し進めていってしまったのだ。意識の領域のいちばん端にまで。(下p283)

 

僕はふと子供の頃に読んだ科学の本を思い出した。そこには「もし摩擦がなかったら世界はどうなるか?」という項があった。「もし摩擦がなかったら」とその本は書いてあった。「自転の遠心力で地球上の何もかもが宇宙に吹き飛ばされてしまうでしょう」と。(下p284-285)

 

「本当に何かをやるというのは惨めに混乱して骨の折れることだよ。意味のない部分が多すぎるしね。でも何かをしたくなるっていうのはいいことだ。そういうものがないと上手く生きていけない。」(下p290)

 

「どんなものでもいつかは消えるんだ。我々はみんな移動して生きてるんだ。僕らのまわりにある大抵のものは僕らの移動にあわせてみんないつか消えていく。それはどうしようもないことなんだ。消えるべき時がくれば消える。そして消える時が来るまでは消えないんだよ。たとえば君は成長していく。あと二年もしたら、その素敵なワンピースだってサイズがあわなくなる。トーキング・ヘッズも古臭く感じるようになるかもしれない。そして僕とドライブなんてしたいとは思わなくなるだろう。それは仕方ないことなんだ。流れのままに身をまかせよう。考えたって仕方ないさ」(下p291-292)

 

「いろんなことを頭から決めてしまわない方がいい。」(下p292)

 

「あなたを呼んできたのはあなた自身なのよ。私はあなた自身の投影に過ぎないのよ。私を通してあなた自身があなたを呼び、あなたを導いていたのよ。あなたは自分の影法師をパートナーとして踊っていたのよ。私はあなたの影に過ぎないのよ。」
「あなたが泣けないものの為に私たちが泣くのよ」とキキは静かに言った。(下p300)

 

「耳を澄ませば求めているものの声が聞こえる。目をこらせば求められているものの姿が見える」
「標語みたい」と彼女は言った。
「標語じゃない。生きる姿勢を言葉にしただけだ」と僕は言った。(下p325)

 

そしてキキの時と同じように僕は壁を抜けた。前と同じだった。不透明な空気の層。ざらりとした硬質な感触。水のような冷やかさ。時間が揺らぎ、連続性がねじ曲げられ、重力が震えた。太古の記憶が時の深淵の中から蒸気のように立ちあがっているのが感じられた。それは僕の遺伝子なのだ。僕は自分の肉の中に進化のたかぶりを感じた。僕はその複雑に絡み合った巨大な自分自身のDNAを越えた。地球が膨らみ、そして冷えて縮んだ。洞窟の中に羊が潜んでいた。海は巨大な思念であり、その表面に音もなく雨が降っていた。(下p334)

 

僕はそこに含まれていた。誰かが僕のために涙を流していた。僕が泣けないもののために誰かが涙を流しているのだ。(下337)

           
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